地方都市の単身赴任を4年も勤め、支店次長から関東圏の支店長へ栄転する事になった。
単身赴任の理由は介護の為で
本当に妻には苦労を掛けた4年間だった。一人っ子の俺には、長期入院をしている母親がいて、4年間ずっと妻に面倒を掛けてしまった。
その母親も2年前に亡くなり、小山田の家をそのまま相続し、妻が一人で暮らしている。
母親が亡くなった後、妻にこっち来るか聞いてみたが、『お父さんとお母さんの家は私が守らならないと!』と
しっかりと答えてくれた。
俺は少し淋しくもあり、嬉しくも有りな気持ちで、妻の言葉に
『ありがとう。ごめんな。』と答えた
愛する妻の気持ちに答えるため、仕事に打ち込んだ。
人事部次長で同期の山崎から、内示を受けた。「滝口支店長おめでとうございます。◯谷支店の支店長に来月1日でご栄転となります、、、まぁ社交辞令は此処までだな!でな、前任の山口さん今長期入院中なんだよ。で、急で悪いけど、明日営業本部に顔出して、統括部長と打合せしてくれないかな?
時岡さんせっかちだからさ。頼むよ。
そっちの支店長には、多分今時岡さんが電話してると思うからさ。」

結局、支店長から直ぐに帰る様、促され新幹線に飛び乗った。
家には予備のスーツも有り。単身赴任宅から荷物を持って行く必要も無い為、その点気楽だった。
一応妻の携帯に連絡するが、いつもと同じく電話には出ない。大体何時も電話しても1回では出ない。下手すると翌日に成るのがいつもの妻だ。

新幹線の駅から30分ちょっとで、我が家だ。家の近く迄来ると、玄関前に
一台のセダンが停まっていた。
アレお客さんかな?
助手席を見ると妻に似た髪型の女性が
嫌あれは間違いない!妻だ!
妻は運転席の男を顔を近づけ唇を重ねた。濃厚なキスは何分も続いた。
「どういう事だ!妻が浮気?あの貞淑な妻が?家を守りながら俺の帰りを待っていると思っていたあの妻が?」

怒りで爆発しそうな俺と、俺自身信じられないが冷徹な感情に俺もいた。
俺は携帯でその忌まわしき場面を動画撮影していた。
妻は名残惜しい態度で男から離れ家に入って行った。
さてどうするか?このまま家に入り、妻に動画を見せ、怒鳴りつけ事の顚末を尋問するか?色々なパターンが頭に巡っては、否定していった。

冷静になれ、冷静に!
今日は家に帰るのは止めよう。
会社の近くのビジネスホテルを携帯で予約して、駅に向かった。