憧れの女子高に入学することができて、私の学校生活はとても充実していた。テニス部の練習は厳しいけれど、仲の良い同級生はたくさん居るし、優しくしてくれる先輩も少しは居る。
 学内に男子が居ないというのは、物足りないと言えば物足りない。でも、そのぶん女子が多いわけで、つまり友達に成り得る存在もそれだけ多いわけで、悪いことではないと思う。特に私の場合、部活動に打ち込んでいるので、恋愛はもう少し先でも良いし。
 不満と言えば、あとは、部活後に学校のシャワールームを使えないというのがある。数が限られているので、三年生しか使うことを許されていないの だ。三年生が帰るのを待ってから使っている二年生も居るには居るけど、一年生までそんなことをしたら、生意気だとか何とか言われてしまう。
 だから、夏が近付いて暑くなってきた時期にもかかわらず、私は、汗だくの身体をタオルで拭いただけで、帰りの電車に乗らなければならないのだった。
 7時の電車は、帰宅ラッシュに直撃されて、ほぼ満員だ。見知らぬおっさんたちと密着を強制されるのは嫌だったが、汗臭い女子高生に密着されるおっさんたちだって、大概 迷惑だったろう。それを思うとあまり嫌な顔もできない。

 学校から駅までは自転車だけど、駅から家までは徒歩になるので、そこからがきつい。駅と家の間も自転車で移動したいところだ。部活で疲れ切った足 を使い歩くのは、かなり辛い。もうひとつ自転車が欲しい。実際、そうしている生徒は少なくない。そのことを母親に言った時の返答は、全く冷たいものだっ た。
「バイトして自分で買えば?」
 要約するとそんなとこだ。まあ、もっと柔らかな表現を使っていたような気がするが、要求を否定された私からすれば、酷い扱われ方をされたような 気分になった。部活でバイトどころではないというのに。ワガママに過ぎないのは分かっていても、自転車をふたつ買い与えてもらった友達を何人か知っている ので、愚痴りたくもなる。
 世の中は不公平だ。とはいえ、それを言ったら、私は、ずいぶんと恵まれていると思う。別に、日本に生まれてきただけで外国人に比べれば恵まれて いるとか、そういう薄っぺらい奇麗事を言いたいのではない。単純に、周りの友達と比べて、容姿が優れているのだ。はっきり言って、私は可愛い。自己評価で は、クラスで一番だ。高校で一番かと言われたら、さすがにそうとは言えないかもしれないが、もしミスコンが開かれれば、とりあえず候補には挙がるだろう。 そんな感じ。

 駅の改札を抜けると、後は数分で家に着く。徒歩だけど。
 帰り道には、申し訳程度の電灯があるだけで、結構 暗い。
 私はこの暗い帰り道が好きだった。閑静な住宅街なので、たまに自動車が通るくらいで、あまり五月蠅くはない。電車の音もあるか。
 とにかく、そういうのを除外すれば、コオロギの鳴き声が聞こえてきそうな静けさである。
 人通りの少ない道を歩いていると、なんでか落ち着く。だから好きだ。
 しかし、そのお気に入りの環境が、レイプの原因となった。後から考えれば、なんて危険な道だろう、と思うのだけれど、実際に被害を受けるまで は、全く思いもしなかった。頭の片隅くらいには、そういう可能性も浮かんでいたかもしれないが、真剣に考えることはなかった。レイプなんて自分とは無縁の 世界で起きていることだとしか思っていなかったのである。
 なので私は、後ろから走ってきたミニバンを、気にも留めなかった。通り過ぎると信じて疑わなかった。
 私の横で停まっても、それを不審には思わなかった。道でも聞きたいのかな、と思った。そして、だとしたら面倒だな、と思った。そう思いながらも礼儀正しく答えるくらいには、外面の良さを備えているので、この時もそうするつもりだった。
 男がふたり、後部座席からいきなり飛び出してきても、私は危機感を覚えなかった。なんとも間抜けなことに、「あぁ、なんだ、ナンパか」と思ったのだ。
 彼らに腕を掴まれ、引っ張られる段階になって、ようやく事態を悟った時には、すべてが手遅れだった。

                                                                                   ミニバンに押し込まれた私は、失禁しそうになった。恐怖を感じると本当に尿道が緩むのだということを、この時 初めて知った。
 お漏らしをしないよう、股間に力を入れる。
 その間に、外へ出ていた男を収容した車が、発進する。
 車の窓は真っ黒になっていて、外の様子は見えなかったが、音と振動から、車が動いていることが分かり、私は絶望的な気分になった。もうどうやっても逃げられない。実際には必ずしもそうではなかったかもしれないが、私はこの時点で逃走を諦めた。
 だからといって、もちろん、レイプされようとしている事実を受け入れることはできなかった。
 私は男たちに訴えた。
「お、お願いします、帰してください……」
 喋っているうちに、泣きそうになった。
 男たちは、薄ら笑いを浮かべるだけで、私の言うことを聞き入れる気なんて、これっぽっちもない。それが彼らの表情から分かってしまった。
 ついさっきまで、ごく当たり前の日常の中に居たのに、どうしてこんなことになってしまったのか。まるで理解できなかった。
 この理不尽な状況には、怒りを感じた。泣き叫んで暴れ出したい気持ちすらあった。けれど、男たちに対する恐怖の方がずっと強く私の心を支配していたので、癇癪を起こすことはとてもできなかった。
 私は小さく震えながら静かに泣いた。できるのはそれくらいだった。

 車内には、ヤンキー風の若い男たちが4人居た。全員、20歳前後といったところだと思う。ひょっとしたらもっと若くて、私と同じような年齢なのかもしれない。
 運転席にひとり。助手席にひとり。そして、後部座席で私の両隣にひとりずつ。
 彼らの手際から、計画的なレイプであることは明らかだった。
「その制服、官能女学園だろ? 進学校の。頭良いんだ?」
 右隣の男が話し掛けてきても、私は震えるばかりだった。無視した形になってしまったが、男は気にした風もなく、にやにやと笑っていた。
 すると左隣の男が私の顔をじっと見た。
「すげぇ可愛いな、おい。やっぱり当たりだったな」
「おー、こりゃ当たりだな」
 左右から顔を覗き込まれて、私は縮こまった。
「だから言ったろ。俺は後ろ姿を見るだけで、どれくらい可愛いか分かんだよ」
「前は外してたろうが。ぜってー可愛いとか言っといて、あんな微妙な女、どう考えても外れだろ」
「んーなこと言って、ノリノリで犯してたくせによ」
「せっかく捕まえたんだから、ヤんなきゃ損だろ。つか、俺が言いたいのは、そういうことじゃなくてなぁ――」
「ケツまで犯してたじゃねぇか」
「だーから、そういうんじゃねえっての」
 両隣の会話を聞きながら私は無言で涙を流した。


 私は足を揃えて膝に手を置き、行儀良く座っていた。
 左隣の男に胸を掴まれても、姿勢を変えることはなかった。
「顔は可愛いけど、おっぱいはそんなに大きくないなぁ。こりゃあ、減点だな」
 男は楽しそうに笑いながら、私の胸を揉んでくる。
「…………」
 私は、無言でそれを甘受していた。とにかく恐くて、小さく震えていることしかできなかった。
「大きさなんてどうでもいいだろ? 重要なのは形だよ。あと色な。乳首の」
 反対側の男はそう言って、もう片方の胸に手を伸ばした。
 左右から好き放題に胸を揉まれるのは、人として扱われていないかのようで、屈辱だった。
「まあ、乳首は重要だよな。ちょっと見てみるか」
 左の男がセーラー服の裾を掴んだ。
「あ……」
 私は思わず身をよじった。それで男の手から逃れられるとは到底 思えなかったが、無意識に動いてしまったのだ。
「なに?」
 男は私の顔を見つめた。短い言葉だったが、「抵抗したら怒るぞ」というような意味が込められているように感じ、私は身体を硬直させた。
「ほら、手を挙げて。バンザイだよ、バンザイ」
 男に従ったわけではなかったが、セーラー服を捲り上げられると、私は嫌でもバンザイをしなければならなくなった。腕に力を入れれば、それを回避することはできるかもしれないが、とても実行する気にはなれない。
 セーラー服を頭から抜き取られることによって、私は再び手を下ろすことができた。
 上半身を守っているのは、セーラー服の中に着ていたTシャツとスポーツブラジャーだけになってしまった。
 部活で流した汗の臭いがしたりしないか、少し気になった。一時的とはいえ、脇を開いたりもしたわけだし。そんな場合ではないというのは分かっているが、気になるものは仕方がない。
 幸いなことに、男たちは私の体臭を気にしていないようだった。まあ、一応、部室で8×4(エイトフォー)を脇に吹き掛けてはいたので、それが役に立ったのかもしれない。
「高校生なのにスポブラかぁ。可愛いじゃん。何か部活でもやってんの?」
 左の男がTシャツを脱がせながら話し掛けてくる。
 私はやはり答えられなかったが、代わりに右の男が言った。
「テニス部だよ。テニスラケットを持ってたろ?」
「んー? そんなもん、ないぞ?」
「拉致る時に落っことして、そのまんまだからな」
「本当か?」
 男が確認したのは、私に対してだった。
 私は辛うじて頷いた。
「なんだ、そっか。大事なラケットなんだろ? ごめんなー」
 全く誠意のない謝罪だった。


 Tシャツを脱がされると、今度はスポブラをたくし上げられた。とうとう胸が無防備になってしまった。
「乳首ちっせー」
 男は嬉しそうに言った。
 もうひとりの男も、私の胸を見つめながら笑顔になる。
「いいねぇ。でも色はちょっと黒くないか?」
「お前、前にも言ってたろ、それ。暗いからだって。何回も言わせんな」
「もっと車内灯が弱いんだよなあ」
 両隣の男たちの遣り取りに、運転席から横槍が入る。
「うるせー! 文句あるんなら、お前らが車 用意しろよ!」
 私は、喧嘩でも始まるのではないかと恐れたが、しかし彼らにしてみれば、どうやら日常的な会話に過ぎないようで、男たちの表情が変化することはなかった。
「分かった分かった。この車で我慢してやるよ」
 右隣の男がそう言うと、運転席からまた不満げな声が上がった。助手席からは笑い声がする。
 女子高生を拉致して、強姦に及ぼうとしているというのに、彼らの様子に緊張は見られなかった。そのことから、今まで何人もの女性をレイプしてきたであろうことが、窺い知れる。ここまでの会話からも、ある程度は察していたけれど……。
 倫理観を持ち合わせていない人間というものは本当に存在するのだ。私はこの時、初めてそれを実感した。

 胸を隠そうと思えば、できないこともなかったが、私の手は依然として膝の上にあった。
「可愛い乳首ちゃんを大きくしてやるよ」
 左の男が私の乳首を鷲掴みにして、指先で捏ね回してきた。
「う、うう」
 初めて男の人にそこを刺激され、私は呻かずにいられなかった。気持ち良いというわけではないが、くすぐったくて、じっとしてはいられない。
「感じるだろ? なあ?」
「…………」
 私は頭を小さく横に振った。
「こういうことをされたことはあるのか?」
「…………」
「おい、聞いてるだろ? 答えろよ」
 なおも私が黙っていると、男の指に強い力が加わった。
「い、痛いっ」
「答えろっつってんじゃん」
 反対側の男が「まあまあ」とたしなめてから、私に顔を向けた。
「そんなこと言われても、答えにくいよなぁ?」
「…………」
「おお? 俺も無視すんの?」
 さっきまでは私が無反応でも怒りそうな雰囲気は微塵もなかったが、もうそういう空気ではないらしかった。
 私は、震える唇をなんとか動かした。
「い、いえ、ごめんなさい……」
「じゃあ、答えろよ。処女なのか?」
「……はい」
 覚悟を決めて返事をすると、不機嫌そうにしていた両隣の男は、一転して表情を和らげ、右の男なんて口笛を吹いたりもした。
 彼らの感情の変化が読めず、私は困惑するばかりだった。
 そうこうしているうちに、男の指で刺激された乳首は硬くなってしまった。
 勃起状態になった乳首を見て、男は満足げに指を離した。


 「処女のマンコを見せてもらおうかな。いいだろ?」
 男は私に聞いてきたが、しかし返事を待つことなく、スカートを掴んだ。
 膝に置いていた手を払われ、スカートを捲り上げられると、白い下着が見えるようになってしまった。
 もちろん、それだけでは終わらない。男はすぐさま下着にも手を掛けた。
 さすがに私は黙って見ていられず、男の腕を掴んだ。ほとんど力を入れておらず、添えただけに近い。
「あ、あの……」
「はあ? なに、この手」
 不快そうな顔を向けられ、私は一気に萎縮してしまい、男の腕から手を離した。
 パンツがするすると下げられていく。太股を過ぎ、膝を通過し、足首から抜き取られる。
 スカートはすでに捲り上げられているので、私の股間が男たちに曝け出されることになった。
 私は自らも下半身へ視線を送った。黒々とした陰毛が目に入り、視界が涙で霞む。
 どうして、こんな目に遭わなければならないのか。あまりの理不尽に、ますます涙が溢れてくる。
 覆うものが無くなった股間は、全くの無防備だった。外気に晒されているだけでも違和感がある。トイレでパンツを下ろした時と同じ感覚のはずなのに、全く別のように感じる。
「おい、そっち持てよ」
「ああ」
 両側の男ふたりは、示し合わせて私の太股を掴んだ。
 私は、左右から足を引っ張り上げられ、M字に固定された。大股開きの格好を強制されたのである。フロントガラスに向かって股間を披露しているかのようだった。
 M字開脚をしているせいで、陰部が口を開いてしまっていた。それを自覚すると、胸の奥がヒヤリとした。
「嫌っ、嫌ですっ」
 私は身体を揺すった。男たちが怒り出すかもしれないと思いつつも、抵抗せずにはいられなかった。
 しかし、両側の男たちは、私の膝裏に腕を通し、肘でしっかりとロックしており、ちょっとやそっとの力では、振り解けそうにない。
 運転席の男は、チラチラとバックミラー越しに私の股間を覗いていた。
 助手席の男なんて、身を捻って直接 見ている。
 これほどの恥辱は、今まで生きてきて味わったことがない。
「ううっ、うっ……ううう……」
 それまでは涙を流すだけだったが、もはやその程度では収まらず、私は、子供のように声を上げて泣き濡れた。


 私は、自分の股間にコンプレックスがあった。陰毛は薄いが、小陰唇の形が崩れていて、しかも少し出っ張っているので、非常に醜く見えるのである。まあ、 あんまり比較検討はしていないので、どの程度の醜さなのかは、よく分からないが。しかし、綺麗な部類には入らないに違いない。男たちが私の股間についての 感想を特に述べなかったので、ホッとしたくらいだった。
 大股開きで泣き喚く私に構わず、両隣の男たちは、陰唇に手を伸ばしてきた。
 左の男がクリトリスに触れ、右の男が膣口周辺を触れた。
 もちろん私は、この時までにオナニーの経験を済ませている。それどころか、週に何度かはクリトリスを自分で擦っているオナニー常習犯である。
 だから、敏感な箇所への刺激には慣れているはずなのだけど、他人の指によってもたらされる感触は、オナニーの時とはまるで違っていた。
 男たちのテクニックが優れているとか、そういうことでは多分ないと思う。彼らの指の動きに、女を喜ばせようなんて意図は感じられなかった。ただ触りたいから触っているだけ。無造作な手付きからそれは明らかだった。
 私はたまらず腰をもじつかせた。とはいえ、別に快感に悶えているわけではない。慣れない刺激に戸惑っているだけだ。
 けれどクリトリスは、男の指によって擦られると、乳首の時と同じで、いとも簡単に硬くなってしまった。
 男の指の感触から、クリトリスが勃起していることを、嫌でも思い知ってしまう。
 しかしそれよりも、喫緊の問題は、膣口に触れている右隣の男の指だった。今にも指が侵入してきそうで、恐ろしくてならなかった。
 右の男は、指を突っ込もうという気はなく、陰唇を撫でるばかりだったが、それは最初の方だけで、しばらくしてから指先が膣口に沈み始めた。
「やめて、ください」
 私は泣きながら哀願したが、それを聞き入れられることはない。
 男の指は、何の感慨もなさそうにあっさりと第一関節まで入り込んできた。
 すぐに私は痛みを感じた。反射的に膣内を締め付けたが、そんなことで侵入を阻止することはできるはずがなかった。
 その後も、男の指は、根元までずぶずぶと突き進んできた。
「痛い、痛いです」
 私の声を聞き、男は頬を緩めた。
 悲痛な訴えも男を喜ばせる結果にしかならなかった。


 前戯もそこそこに、私はとうとうレイプされることになった。
 大股開きの強制は解かれたものの、息つく間もなく仰向けに寝かされる。
 両隣に座っていた男ふたりは、後部座席を倒して、広々とした空間を確保すると、私の上半身と下半身にそれぞれ取り付いた。
 男ふたりは、いずれもズボンとパンツを下ろして、ペニスを露出させた。
 それを見て私は息を呑んだ。薄暗い車内では、あまりよく見えなかったが、しかしそれが勃起しているのは分かった。私は処女だけれど、もちろん男 性器の形状は知っている。ネットのエロ動画で見たこともある。その時は、棒状の物が股間に生えているのが滑稽に思えたけれど、今は、とてもそんな風に見え なかった。恐怖の対象でしかない。

 震え上がる私に構わず、男のひとりが、ペニスを私の股間に添えた。
 この時 男は、挿入することに意識が向いていた。だから、彼を押し退けようと思えば、簡単にできただろうと思う。けれど私はそれをしなかった。そんなことをしても男を激昂させるだけなのは明らかだった。
 ペニスが侵入してきたことを、私は、破瓜の痛みによって初めて悟った。挿入された感覚はあまりなかった。ただ、裂けるような痛みだけがした。
 とはいえ、我慢できないというほどではない。私は涙を流し、肩を震わせ、嗚咽を漏らしていたが、叫び声を上げたりはしなかった。
 男が腰を前後させ始めても、私は、小さな声で泣くだけだった。
 開かれた両足が、男の動きに合わせて、空中で揺れ動く。それがなんだかとても悲しかった。惨めに犯されるしかない私の立場を象徴しているかのように感じたのかもしれない。


 犯されている間、私は、自分の境遇を嘆いていることすら許されなかった。
 もうひとりの男が、横からペニスを私の顔に突き出してきたのである。
 先端を唇に押し当てられた時は、破瓜の痛みを忘れてしまった。それほどの嫌悪感が込み上げてきたのだ。
 ペニスとは、つまり排泄器官であり、そこに口をつけるだなんて、到底 有り得ないことのように思えた。もちろん、フェラチオという性行為は知っているし、いつか自分がそれをすることになるのも覚悟していたが、この時は、そう いう風に考えることができなかった。とにかく「汚い」としか思えなかった。

 私は顔を振って拒絶しようとしたが、それで許してくれるほど甘い連中ではない。
 両の頬に、強烈な往復ビンタを浴びせられた。
「黙って咥えろ!」
 男に一喝され、私は、仰向けのまま顔を横向きにして、小さく口を開いた。半開きにもなってなかったと思う。しかし顎から力は抜けており、男が強引にペニスを押し込んでくると、一気に侵入を許す結果になった。
「う、うぐ……」
 私は呻いた。口内 奥深くまでペニスを咥えさせられては、泣き言を吐くことすら不可能だった。
 実際に強制させられるまで、フェラチオと言えば、排泄器官を口に含むこと自体しか頭になく、嫌悪感もそれに対してばかり向けられていたが、いざ こうなってみて、真っ先に私を襲ったのは、鼻に当たっている陰毛の不快感だった。口内に押し込まれたペニスの感触よりも、そっちの方がよほど気になった。
 私は鼻で息をするのを止めた。しかし、口を塞がれている以上、長くその状態を保っていることはできなかった。レイプされて呼吸が荒くなっていることもあり、たったの数秒で、鼻から強く息を吸うことになった。
 そして吐き出す。私の鼻息で、男の陰毛が大きくなびいた。傾いた陰毛は、すぐに元の位置に戻り、また私の鼻に当たった。
 それが酷く不快で、顔を顰めようとしたが、その直前、男が左右から私の顔を掴み、口内のペニスを出し入れし始めた。まるで、口を性器に見立てているかのように、腰を突き出してくる。


 ペニスの先端で喉を何度も小突かれて、陰毛の不快感どころではなくなった。
 男は、自分の腰だけでなく、両手で掴んでいる私の顔も、無遠慮に前後させていた。
 口を犯されているというより、顔を犯されているような気分だった。
 ガクガクと顔を揺さぶられたせいで、股間を露出した時とは比較にならないくらい、顔面が真っ赤になってしまう。口にペニスを突き立てられる屈辱 もあるだろうが、それよりもやはり、激しく動かされて物理的に血が上ったせいだろう。ここまで赤くなったのは生まれて初めてかもしれない。

 イラマチオの間、膣内も蹂躙され続けていた。
 痛みは変わらないが、最初の頃よりも、結合部の粘液が増しているようだった。ペニスの出入りする感触は分かり辛いが、全く把握できないほどでもない。滑り具合に明らかな変化があるように思う。
 膣から破瓜の血でも流れているのだろうか。それを確認しようにも、顔は男にガッチリと掴まれており、好き勝手に動かされている。
 今この場において、私の身体は、私の物ではないのだ。

 つい数分前まで処女だった私は、レイプされながら、仰向けの状態で顔だけを横に向け、強引にフェラチオまでさせられたわけだが、その感想としては、「惨め」という一言に尽きる。
 上半身と下半身を別々に犯されるのは、物みたいに扱われているようで、人としての尊厳を踏みにじられるに等しいと思う。
 家畜か、さもなくば道具になった気分を味わいながら、私はペニスの突き込みを受け続けた。


 男は、何の躊躇もなく私の中に射精した。
 精液を放たれた感触はあまりしなかったが、ペニスの脈動をなんとなく感じ取った私は、無駄と知りつつも、腰を逃がして結合を解こうとした。
 しかしそれはやはり上手くいかず、男はむしろ私の腰を強く引き寄せ、繋がりをより深くしてきた。
 妊娠の可能性に恐怖している私に、更なる責め苦が加えられた。私の口内に突き込まれていたペニスまでもが、射精に至ったのである。
 排泄器官から放出される粘液なんて、私からすれば、オシッコとさほど変わらない物に思えた。そんなものを口の中に出されては、とても耐えられなかった。
 私は、男の手を振り解き、ペニスを口から吐き出した。まだ射精途中だったので、精液が頬に飛んできた。
 男が激怒するのではないかと思い、私は恐る恐る様子を窺った。
 予想に反し、男は半笑いで私を見下ろしていた。
 私は安堵したが、同時に、ここまでされても男の顔色を気にしなくてはならない自分が、なんとも情けなかった。

 車はいつの間にか止まっていた。辺りは静かだったので、どこか人の居ないところに停車したのだと思う。
 そこで私は、運転席と助手席の男にまで犯された。
 最初のふたりが射精を終えて離れた時、私は、これでようやくすべてが終わったのだ、と思い込んでいた。車の中には男が4人居るわけで、普通に考 えればふたりが満足してそれでレイプが終わるはずはないのだけれど、処女を失ったショックでそこまで考えることができなかったのである。
 終わった気になって、座席で仰向けのまま悲嘆に暮れていた私は、新たにふたりの男に組み敷かれた時、絶望で声も出なかった。短い間隔の呼吸を繰り返しながら涙を流すのみだった。
 私は、されるがままに犯された。それまでもほとんど抵抗らしい抵抗をしてこなかったが、新たなふたりを相手にさせられた時からは、身体に力を入れることさえなく、人形のようになっていた。簡単に足を開かされ、口を開けられ、ペニスを突き込まれた。
 中出しされて膣内が潤い摩擦が少なくなったのか、破瓜の痛みは小さくなっていた。
 それ自体は歓迎すべきことなんだけれど、しかしその分、恥辱は強くなる。好き放題にレイプされる悲しみに私はひたすら涙を溢れさせた。
 どれほど屈辱的な目に遭わされようと、私には、男たちが早く満足してくれるよう祈ることしかできなかった。

 4人全員に輪姦された後、小休止を挟んで、ふたりがまた私を犯した。今度は、ふたり同時ではなく、ひとりずつ挿入してきた。
 この時 私は、制服も下着も脱がされ、四つん這いにさせられていた。ペニスを出し入れされながら、お尻を何度も叩かれた。
 最後の男も後ろから責めてきた。
 私はすっかり諦めの境地に至っていたが、犯されている最中、お尻の穴に指を入れられた時は、さすがに「うっ」と呻いた。まあ、指だけとはいえ肛門を貫かれたのだから、その程度の反応しかしなかった、と言った方がいいかもしれないが。

 輪姦が終わると、私は車から放り出された。輪姦されている時は気付かなかったが、大きな公園の駐車場に停車していたようだった。
 駐車場にも公園にも、他に人の気配はない。周りは木ばかりなので、近くの道路を誰かが通り掛かったとしても、顔を見られる心配はほとんどないだろう。男たちはレイプのために事前にこの場所を見繕っておいたのかもしれない。
 全裸で道路に蹲る私に、制服が投げ付けられた。それから、鞄や靴も。
 下着はそのまま持って行かれたようだった。レイプの記念にするとかなんとか、男のひとりが言っていたような気がする。女子高生を拉致してレイプするたびに下着を収集していて、今や段ボールひとつ分は溜まったのだとか。
 男たちは、何の感慨もなさそうにドアを閉め、さっさと車を発進させて、どこかへ行ってしまった。
 制服で身体を隠しながらそれを見届けた私は、周囲を見回し、誰も居ないことを確認してから、セーラー服に頭を通し、ついで、スカートを身に着けた。靴下と靴を履く。
 涙は引いていた。なんだか、これは現実ではないような気がしていた。ついさっきまで恐怖と痛みに泣いていたのが、信じられなくなってきた。と言っても、別に夢を見ているような感覚はなかった。では何と感じていたのか、自分でもよく分からない。
 公園の敷地内には、トイレらしき建物があった。
 私は立ち上がり、そこに向かって歩き出そうとした。
 しかし足が止まった。立った拍子に、膣口から精液が溢れてきたのだ。
 おぞましい感触が太股を伝っていく。
 私は、ああ、と心の中で呟いた。レイプされたのだという実感が急速に込み上げてきた。
 顔が引き攣るのを感じる。呼吸も荒くなっている。
 車の中で散々泣いたにもかかわらず、また泣いてしまうのか。そう思うと、余計に我慢できなくなった。
 誰が見ているわけでもないのに、私は顔を手で覆った。鼻を啜るようになると、もう止まらなかった。
 気付いたら私は地面に膝を着いて泣いていた。